TRT・新しい耳鳴り治療法について

滝野川病院 耳鼻咽喉科医師 青木佐知子

TRT療法とはなんでしょう。

   Tinnitus Retraining therapy (耳鳴再訓練療法)のことです。耳鳴を気にならないようにする治療法です。1980年後半に米国のJastreboffらによって開発され、欧米を中心に日本でも急速に普及してきています。その有効率は8割前後といわれております。 


TRT療法のやり方

 TRT療法は耳鳴への不安をとる心理療法と、耳鳴の音をソフトにやわらげる小型の雑音発生器(写真)を組み合わせておこないます。雑音発生器は補聴器のような形をした器具でサーという静かな雑音を出します。それをつけていることで、耳鳴にすこしづつなれて生きます。雑音発生器は自己負担で5万8千円ですが、まずは数週間ためしていただき、ご自分にあうことを確認してから購入をきめていただきます。   

TRTはなぜ有効なのでしょう。

 夜、となりから聞きなれないギーギーという音がきこえてくれば、たとえ、聞こえるか聞こえないかぎりぎりの小さい音でも人は不安になって耳をそばだててしまいます。もちろん、それが隣の子供が練習しているバイオリンの音だとわかれば、そのうち気にならなくなります。気になる耳鳴を、エアコンの雑音や冷蔵庫のモーター音のように意識にのぼらないようにするのがTRT療法の根幹です。耳鳴りは順応すれば、意識の下にはいって生活の支障にはならなくなります。

アパートの隣の部屋から毎晩ギーギーという不気味な物音が聞こえてきます。
何の音でしょう?
もしかしたらバラバラ殺人事件でも…?
不安で音が気になって寝られません。


でもその音は隣の子がバイオリンの練習をしている音だとわかりました。
すると…もう物音は気にならなくなりました。
このようにTRT療法では耳鳴が「あってもきにならない状態」になることをめざします。
※以上の図はTRT療法のカウンセリングの原理をまんがにして示したものです
しかし、すべての方がTRT療法の適応があるというわけではありません。
当然のことですが、TRTより前に中耳炎や突発性難聴など、耳鳴りを起こす原因がある場合にはその治療が優先されます。また、TRTはソフトな雑音を用いて、外界の音と耳鳴りとのコントラストを少なくして耳鳴りになれさせる治療ですので、TRTの音が聞こえないような高度の難聴者は対象になりません。また、認知症の患者さん、精神科領域の病気をおもちの患者さんには不向きと考えます。
 また、耳鳴りを完全に消してほしいとか求めているものが違うときも、TRTに失望するかもしれません。問診表など用意して、また患者さんに丁寧に問診をして、適応をきめていきます。
 TRT療法により耳鳴りに悩む多くの患者さんのお役にたてればこれほど幸いなことはありません。




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