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わたしたちは起きている間は音にかこまれて生きています。でも、わたしたちの頭はすべての音を同じように認識するのではなく、「無視していい音」と「注意しなくてはいけない音」、「危険な音」に無意識にわけています。
「無視していい音」は、たとえば外を走る車の音、エアコンのファンの音、冷蔵庫のモーターの音などです。これらの音は脳の深いところで抑制されるので、あまり気になりません。
「注意しなければいけない音」は、会話音、駅のアナウンス、レンジのタイマーの音とか、調理している焼肉のじゅうじゅういう音などです。これらは生活に必要なので、人は意識を集中して聞こうとします。
「危険な音」は、たとえば、敵が近づいてくるときの足音、自分の子供が遠くで泣いている声などです。実際の耳鳴りの大きさはせいぜい5dBくらいで、ささやき声の30dBよりずっと小さいのですが、ひとたび「危険な音」として脳が認識してしまうと、ものすごく気になります。
夜、となりから聞きなれないギーギーという音がきこえてくれば、たとえ、聞こえるか聞こえないかぎりぎりの小さい音でも人は不安になって耳をそばだててしまいます。もちろん、それが隣の子供が練習しているバイオリンの音だとわかれば、そのうち気にならなくなります。このように、脳は、「危険な音」を「無視していい音」に認識しなおすことができます。これはTRT療法のカウンセリングの根幹です。耳鳴りは順応すれば、最終的には電車や車の音のように、意識の下にはいって生活の支障にはならなくなります。
しかし、すべての方がTRT療法の適応があるというわけではありません。
当然のことですが、TRTより前に中耳炎や突発性難聴など、耳鳴りを起こす原因がある場合にはその治療が優先されます。また、TRTはソフトな雑音を用いて、外界の音と耳鳴りとのコントラストを少なくして耳鳴りになれさせる治療ですので、TRTの音が聞こえないような高度の難聴者は対象になりません。また、認知症の患者さん、精神科領域の病気をおもちの患者さんには不向きと考えます。
また、耳鳴りを完全に消してほしいとか求めているものが違うときも、TRTに失望するかもしれません。問診表など用意して、また患者さんに丁寧に問診をして、適応をあやまらないようにしていきたいと思っています。
TRT療法により耳鳴りに悩む多くの患者さんのお役にたてればこれほど幸いなことはありません。
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